肝胆膵
胆道閉鎖症
胆道閉鎖症とは
胆道閉鎖症とは、胆汁が流れる胆管が閉塞し胆汁の流れが障害され、肝機能が悪化し、最終的には肝不全へと進行する疾患です。生後2か月までに認められる病気で、早期診断と適切な治療が重要です。
胆道閉鎖症の原因は明確には分かっていませんが、出生前後の炎症や免疫反応、遺伝的要因などが関与している可能性が考えられています。
診断について
主な症状には以下のようなものがあります。
- 黄疸
- 白目の部分や、皮膚が黄色くなることを黄疸といいます。生後2週間を過ぎても黄疸が続く場合はこの疾患の可能性があります。
- 灰白便
- 便の色のもとである胆汁が出ていないため、便が白っぽくなることがあります。母子手帳の便色カラーカードと見比べて、1〜3番であればこの疾患の可能性があります。
- 肝脾腫
- 肝臓や脾臓の腫れが起こり、上腹部で肝臓や脾臓を硬く触れることがあります。
胆道閉鎖症の診断には、以下のようなものがあります。
- 血液検査
- 肝機能の評価、ビリルビン値の測定します。
- CT、超音波検査などの画像検査
- 胆道の形態や肝臓の状態を確認します。
- 胆道シンチグラフィー
- 胆汁の流れを評価します。
- 試験開腹術、胆道造影
- 開腹手術で胆管の形態を評価します。また、胆道に造影剤を直接ながすことで、胆汁の流れを評価します。
治療について
胆道閉鎖症の治療には外科手術が必要となります。
- 葛西手術(肝門部空腸吻合術)
- 胆汁の排泄を回復させるための第一選択となる手術で、生後早期の手術が推奨されます。
- 肝移植
- 葛西手術を行なっても胆汁の流れが十分でない場合は、肝不全の状態に進行することになります。肝不全が進行すると、黄疸の悪化、体重増加不良、腹水の貯留など全身状態が悪化します。そのため、健康な肝臓を移植する治療が必要になります。(詳細は肝移植へ)
先天性胆道拡張症、膵・胆管合流異常
先天性胆道拡張症とは
先天性胆道拡張症とは、主に総胆管が拡張している先天性の疾患で、膵臓と胆管の合流部の形態異常(膵・胆管合流異常)を伴います。特に小児期に診断されることが多く、早期の発見と治療が重要です。
診断について
先天性胆道拡張症の原因は明確には分かっていません。主な症状には以下のようなものがあります。
- 腹痛
- 胆汁の流れがうっ滞することで、特に右上腹部に痛みを起こします。
- 黄疸
- 白目の部分や、皮膚が黄色くなることを黄疸といいます。胆汁の流れがうっ滞することで黄疸が出ることがあります。
- 灰白色便
- 胆汁の排泄が低下するため、便が白っぽくなることがあります。
- 上腹部腫瘤
- 拡張した胆管を腫瘤として触れることがあります。
先天性胆道拡張症の診断には、以下のようなものがあります。
- 超音波検査
- 胆管の拡張を評価します。
- CT・MRI(MRCP)
- より詳細な胆道の拡張を評価します。また、膵管との合流部の評価も行います。
- 血液検査
- 肝機能の評価、ビリルビン値の測定などを行います。
治療について
先天性胆道拡張症の治療には外科手術が必要となります。
- 拡張部胆管切除、肝管腸管吻合術
- 胆道拡張症の根治術になります。腹腔鏡下手術が増えています。拡張した胆管を切除し、その部分に腸管をつなぐことで胆道を再建します。腸管は空腸と呼ばれる小腸、もしくは十二指腸を使用します。
- 胆道ドレナージ
- 拡張部で炎症が起きている場合などは、すぐに根治術を行うことができません。胆管の拡張部、もしくは胆嚢を穿刺してチューブを入れることで胆汁を排出し(ドレナージと言います)、炎症の改善をめざします。
術後は長期の経過観察が必須であり、定期通院が必要になります。術後合併症として、胆管と腸管を直接繋いでいることによる胆管炎や、肝臓内に結石を生じることがあります。結石ができた場合は、石を除去する処置が必要です。また、非常に稀ですが、胆管癌を発症することがあります。当院では成人期になっても当科でのフォローアップが可能です。
門脈血行異常症
(門脈欠損、肝外門脈閉塞)
門脈血行異常症とは
門脈血行異常症のうち門脈欠損もしくは低形成は生まれつき門脈が低形成、もしくは欠損していることにより、門脈からシャント血管と呼ばれるバイパスルートを介して、直接体循環に血流が流れます。
新生児期に高ガラクトース血症(採血検査異常)で発見されたり、超音波検査で異常な血管が発見されたりすることがあります。無症状の場合もありますが、高アンモニア血症を来すことがあり、アンモニアを下げる薬が必要になったり、肝肺症候群や肺高血圧症と呼ばれる呼吸障害を引き起こしたり、肝腫瘍が出来たりすることがあります。
治療について
根治的な治療は外科的な治療で、シャント血管を結紮したり、放射線科によってシャント血管を閉塞させて、本来の門脈血流を回復します。肝外門脈閉塞症は、先天的なものと後天的なものがありますが、門脈体循環シャントあるものは門脈欠損と同様な症状と治療となります。シャント血管の無いものは、門脈圧亢進症を来して、脾機能亢進症や食道静脈瘤などを合併するので、内視鏡による治療や、シャント造設術、脾摘などの外科的治療を要することになります。どちらの疾患も無症状であっても長期的に外来通院をする必要があります。
肝腫瘍
小児の肝腫瘍は成人と比べると発生頻度が低く、その種類も異なることが特徴です。
小児の肝腫瘍には以下のようなものがあります。
- 肝血管腫
- 良性のもので、基本的には経過観察となります。
- 肝芽腫
(かんがしゅ、
Hepatoblastoma) - 小児の肝がん(悪性腫瘍)で最も多い(特に3歳未満で発症しやすい)ものが肝芽腫です。治療は、大きく手術と化学療法があります。手術は肝臓を腫瘍ごと切除する肝切除と、健康な肝臓と入れ替える肝移植があります。小児科と連携して治療を進めます。
また、腫瘍の転移(他の遠くの臓器に移ること)や浸潤(周りの臓器へ広がっていくこと)に対しても切除術が必要になることがあります。その際には、呼吸器外科や肝臓外科などの成人科と連携して手術を行うこともあります。 - その他
- >肝細胞癌(Hepatocellular Carcinoma, HCC)、未分化胎児性肉腫(Undifferentiated Embryonal Sarcoma)などの肝臓癌の手術にも対応しています。
膵臓疾患
小児の膵腫瘍
膵腫瘍は、膵臓に発生する腫瘍です。膵腫瘍は成人にも発生することがありますが、小児の場合は発生頻度が非常に低く、種類も異なることがあります。小児の膵腫瘍には、以下のような種類があります。(詳細は腫瘍ページへ)
- 良性腫瘍
-
固形偽乳頭状腫瘍(Solid Pseudopapillary Tumor, SPT)
膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm, IPMN) - 膵悪性腫瘍(がん)
-
膵芽腫(Pancreatoblastoma)
神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine Tumor, NET)
腹痛や黄疸など症状をきたすこともありますが、他の疾患の検査の中で偶然見つかる場合もあります。
治療の基本は、腫瘍の種類や進行度に応じた手術による摘出です。摘出手術では、必要があれば成人の膵臓外科とも連携して手術を行います。また一部の腫瘍では化学療法(抗がん剤治療)が必要になることもありますが、この場合は小児科と連携して治療を進めます。
外傷性膵損傷
交通事故などの外傷で膵臓が損傷することがあります。程度によって、保存的加療(手術を行わなずに主に経過観察を行う)や、手術、内視鏡的な治療を選択します。
手術や内視鏡治療は成人診療科と連携して治療を進めます。
脾臓疾患
脾腫
脾臓が腫大することを脾腫と言います。遺伝性球状赤血球症や胆道閉鎖症などの他の疾患の合併症として脾腫をきたします。脾腫が起こると、脾臓の機能が亢進して血小板などの血球が減少し、出血や貧血をきたします。それらの状態を改善するため、脾臓を摘出することがあります(脾臓摘出術)。基本的には腹腔鏡下手術で摘出を行います。
脾捻転
脾臓はお腹の中でさまざまな靭帯により固定されています。その固定が生まれつき弱い、もしくは無い人がおり、脾臓が捻れることがあります。捻れると、脾臓の血管も捻れるため、最終的に脾臓が壊死する可能性があります。そのため、捻れた場合にはそれを戻す緊急手術が必要です。残念ながら診断時に壊死していた場合には、摘出することがあります。
外傷性脾損傷
交通事故などの外傷で脾臓が損傷することがあります。程度によって、保存的加療(手術を行わずに主に経過観察を行う)や、摘出術を行います。